試験をおこなう認定団体は昨今、デジタルトランスフォーメーションや新しい規制環境、激化する市場での競争に対応することが必須になっており、既存の試験プログラムがどのように最近の変化に対応しているか二人に尋ねました。
Q. 「エドテックの未来」やテクノロジーがコンピューターベースド試験 (CBT) の展望をどのように変えていくかについて、業界では多くの議論がされていますが、実際に認定団体の方々と話をして、彼らは何を優先事項として捉えていると思いますか?
Julie:私たちのクライアントである認定団体は、試験の信頼性と試験を提供する際にパートナーとなる人々に焦点を当てています。クライアントは「この試験は、必要なものを測定しているのか?」、「この試験を受験すべきではない医師やドライバーはいるのか?」などと自問しています。そういった考えは最終的に一番重要になってきます。そして、これらのすべてを支えているのはセキュリティです。試験セキュリティを維持し、堅牢な手段 (どの試験方法を使用していても) を確保することは、認定資格の価値を維持するために必要不可欠です。
Bridget:認定団体は認定資格試験に対して適切に対応していきたいと考えています。企業の雇用主が最適な人材を採用するにあたり、認定資格に価値があるということを認識してもらうためには、どのように対応するのが一番良いでしょう? 現存している職業は、10 年前からかなり進化しており、社会は違ったものになっています。そして、今後 5 年後、10 年後に存在する多くの仕事が、今はまだ存在していないのです。
Q. では、クライアントは最新のテクノロジートレンドについてどの程度関心を持っていますか? 試験プログラムの一部に最新テクノロジーを取り入れることを必要としていますか?
Bridget:テクノロジーは、アセスメントの限界点を押し広げています。クライアントである有名な IT 企業では、仮想現実 (VR) を使った試験を実施するための最善策を模索しています。テクノロジーの限界に挑戦するクライアントもいる一方で、テクノロジーのもたらす変化に追随するクライアントもいます。
Julie:クライアントは新しいテクノロジーについて想像を巡らすことも少なくないかもしれませんが、実際のところ多くの部分においてテクノロジーはまだそこまでではありません。新しいテクノロジーに敏感でもっと知識を蓄えたいと考えているクライアントも多くいますが、それよりも、テクノロジーを最大限に活かすためには実際にどのように試験プログラムでテクノロジーを利用できるかということなのです。
Q. 新しいスキルを習得・活用するということについて、テクノロジーはどのように関わってくると考えていますか?
Julie:私たちは、10 年前から口頭や筆記試験を採点するためにテクノロジーを導入しています。そのため、テクノロジーを用いて資格を取得するということ自体は、すでに多くの点ですでに実施されています。ただ、それについてはあまり知られていません。市場が期待するものと要求するものの間の適切なバランスを見つけ、適切なタイミングで新しいテクノロジーを導入する必要があります。
Bridget:認定団体は、認定資格の価値を高めるためには受験者が認定資格取得を目指している時や最も効果があると思われる機会を逃さず、受験者にアプローチする方法を探る必要があります。現代の大規模オンライン小売業者のビジネス手法 (消費者ニーズに迅速に対応しているなど) を考えてみても、人々はいかに自分のライフスタイルに照らし合わせて最適な学習方法を探しているのかを感じとることができます。マイクロクレデンシャル (学習をより詳細な単位に分け、個別に認証したもの) の発展を例にあげてみても、従来の資格または免許の進化が感じられます。
Q. それでは新しいテクノロジーを学習に活用するということは、より多くの人々に機会を提供することになりますか?
Julie:はい。 CBT なら、受験者は近隣で試験を受けることができ、認定団体の要件に応じて非常に迅速に試験結果を受け取ることができます。これは希望する求人に応募する際、時間を最大限に活用できることを意味しますので、キャリアパスがより速く変わっていくでしょう。
試験自体のアシスト技術は重要な成長分野です。たとえば、試験を読み返すスクリーンリーダー、テキストを拡大・縮小できる機能、難聴者をサポートする言語ビデオなど、より最適な方法でより多くの人々が受験できるようにするために、テクノロジーは活用されています。
Q. 試験業界にいる企業にとって、テクノロジーの進化におけるチャンスは何だと捉えていますか?
Julie:受験者のニーズに合わせて進化する試験プログラムを通じて受験者を拡大できることです。
試験は一度だけとは限りません。受験者の知識が評価されればキャリア (または生涯) を通じて、今後私たちとの接点が何度も生じる可能性があります。それは「ゆりかごから墓場まで」のコンセプトで、受験者は常に何らかの新しいスキルを学んでいますから、それを実践して、試験を受ける(そして認定を取得します)、といったことが繰り返されていきます。そして私たちは、受験者のフィードバックを試験の改善につなげることができます。このようにしてすべてがエコサイクルの一部となり、進化していくのです。
Bridget:試験認定団体にとっての課題は、「学習の過程」における障害に対しどこでどのようにテクノロジーが役に立つのか、またはどこでテクノロジーが役に立たないのかを判断することです。昨今はすべてにおいて AI を取り入れようとしているかのように見えますが、実際には AI が万能というわけではありません。使う場所や状況に応じたテクノロジーのあり方を検討する必要があります。
EdTech の真の定義は、「教育を支えているテクノロジー」です。私たちの業界は常にそれを念頭にいれておく必要があります。