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Q3 2019

The Global VUE

当社のエキスパートに聞く:EdTech (エドテック)* はどのような影響を試験業界に及ぼすのか?

* Education×Technology (教育×テクノロジー)

今回で第3号となとなるニュースレターをお届けするにあたり、当社のプログラムマネジメント担当シニアバイスプレジデントの Bridget Herd と、EMEA のプログラムマネジメント担当バイスプレジデントの Julie Hunter をご紹介いたします。

両者はそれぞれシニアエグゼクティブチームとグローバルリーダーシップチームの一員として、当社の担当プログラムマネージャーが当社サービスに対するクライアントの期待値を維持できているか、満足度を向上できているかなどチェックする立場にいます。

試験をおこなう認定団体は昨今、デジタルトランスフォーメーションや新しい規制環境、激化する市場での競争に対応することが必須になっており、既存の試験プログラムがどのように最近の変化に対応しているか二人に尋ねました。

Q. 「エドテックの未来」やテクノロジーがコンピューターベースド試験 (CBT) の展望をどのように変えていくかについて、業界では多くの議論がされていますが、実際に認定団体の方々と話をして、彼らは何を優先事項として捉えていると思いますか?

Julie:私たちのクライアントである認定団体は、試験の信頼性と試験を提供する際にパートナーとなる人々に焦点を当てています。クライアントは「この試験は、必要なものを測定しているのか?」、「この試験を受験すべきではない医師やドライバーはいるのか?」などと自問しています。そういった考えは最終的に一番重要になってきます。そして、これらのすべてを支えているのはセキュリティです。試験セキュリティを維持し、堅牢な手段 (どの試験方法を使用していても) を確保することは、認定資格の価値を維持するために必要不可欠です。

Bridget:認定団体は認定資格試験に対して適切に対応していきたいと考えています。企業の雇用主が最適な人材を採用するにあたり、認定資格に価値があるということを認識してもらうためには、どのように対応するのが一番良いでしょう? 現存している職業は、10 年前からかなり進化しており、社会は違ったものになっています。そして、今後 5 年後、10 年後に存在する多くの仕事が、今はまだ存在していないのです。

Q. では、クライアントは最新のテクノロジートレンドについてどの程度関心を持っていますか? 試験プログラムの一部に最新テクノロジーを取り入れることを必要としていますか?

Bridget:テクノロジーは、アセスメントの限界点を押し広げています。クライアントである有名な IT 企業では、仮想現実 (VR) を使った試験を実施するための最善策を模索しています。テクノロジーの限界に挑戦するクライアントもいる一方で、テクノロジーのもたらす変化に追随するクライアントもいます。

Julie:クライアントは新しいテクノロジーについて想像を巡らすことも少なくないかもしれませんが、実際のところ多くの部分においてテクノロジーはまだそこまでではありません。新しいテクノロジーに敏感でもっと知識を蓄えたいと考えているクライアントも多くいますが、それよりも、テクノロジーを最大限に活かすためには実際にどのように試験プログラムでテクノロジーを利用できるかということなのです。

Q. 新しいスキルを習得・活用するということについて、テクノロジーはどのように関わってくると考えていますか?

Julie:私たちは、10 年前から口頭や筆記試験を採点するためにテクノロジーを導入しています。そのため、テクノロジーを用いて資格を取得するということ自体は、すでに多くの点ですでに実施されています。ただ、それについてはあまり知られていません。市場が期待するものと要求するものの間の適切なバランスを見つけ、適切なタイミングで新しいテクノロジーを導入する必要があります。

Bridget:認定団体は、認定資格の価値を高めるためには受験者が認定資格取得を目指している時や最も効果があると思われる機会を逃さず、受験者にアプローチする方法を探る必要があります。現代の大規模オンライン小売業者のビジネス手法 (消費者ニーズに迅速に対応しているなど) を考えてみても、人々はいかに自分のライフスタイルに照らし合わせて最適な学習方法を探しているのかを感じとることができます。マイクロクレデンシャル (学習をより詳細な単位に分け、個別に認証したもの) の発展を例にあげてみても、従来の資格または免許の進化が感じられます。

Q. それでは新しいテクノロジーを学習に活用するということは、より多くの人々に機会を提供することになりますか?

Julie:はい。 CBT なら、受験者は近隣で試験を受けることができ、認定団体の要件に応じて非常に迅速に試験結果を受け取ることができます。これは希望する求人に応募する際、時間を最大限に活用できることを意味しますので、キャリアパスがより速く変わっていくでしょう。

試験自体のアシスト技術は重要な成長分野です。たとえば、試験を読み返すスクリーンリーダー、テキストを拡大・縮小できる機能、難聴者をサポートする言語ビデオなど、より最適な方法でより多くの人々が受験できるようにするために、テクノロジーは活用されています。

Q. 試験業界にいる企業にとって、テクノロジーの進化におけるチャンスは何だと捉えていますか?

Julie:受験者のニーズに合わせて進化する試験プログラムを通じて受験者を拡大できることです。

試験は一度だけとは限りません。受験者の知識が評価されればキャリア (または生涯) を通じて、今後私たちとの接点が何度も生じる可能性があります。それは「ゆりかごから墓場まで」のコンセプトで、受験者は常に何らかの新しいスキルを学んでいますから、それを実践して、試験を受ける(そして認定を取得します)、といったことが繰り返されていきます。そして私たちは、受験者のフィードバックを試験の改善につなげることができます。このようにしてすべてがエコサイクルの一部となり、進化していくのです。

Bridget:試験認定団体にとっての課題は、「学習の過程」における障害に対しどこでどのようにテクノロジーが役に立つのか、またはどこでテクノロジーが役に立たないのかを判断することです。昨今はすべてにおいて AI を取り入れようとしているかのように見えますが、実際には AI が万能というわけではありません。使う場所や状況に応じたテクノロジーのあり方を検討する必要があります。

EdTech の真の定義は、「教育を支えているテクノロジー」です。私たちの業界は常にそれを念頭にいれておく必要があります。

Insights & Innovations

認定資格 : 自分を変えるもの。業界が求めるもの。絶対的な価値があるもの。

過去 4 年間、当社は年次アンケート調査を実施し、業界で認められた認定資格を取得するメリットを、認定保持者の観点から特定し、認定取得に至るまでのさまざまな道筋を概説してきました。最新の調査では 138か国、32 の試験プログラムの受験者から、10,000 以上の回答がありました。当社の調査結果は、新しい認定を取得する際の、魅力的なメリットを明らかにし続けています。

IT 分野でのスキル開発に重点が置かれているため、認定資格の妥当性と有効性は今後数年間は成長し続けるでしょう。

レポートのダウンロード : www.pearsonvue.co.jp/voc

Download the 2019 Value of IT Certication Survey

パフォーマンスベースド試験がなぜ評価方法としてより人気を高めているのか?

パフォーマンスベースド試験は、受験者に何かに関する知識があるかどうかの評価から、受験者が実際に何かを行動できるかどうかの測定への転換を意味しています。これは、シミュレーション、観察試験、状況判断試験などの多様な手法を駆使して実現できる、幅広い評価方法です。こうした手法にはそれぞれに長所や短所があり、正確さも異なります。

アイテムバンクを構築する際、受験者の能力を測定するための多様な問題形式が使用できます。では、なぜパフォーマンスベースド試験が検討に値するのでしょうか。それは、パフォーマンスベースド試験によって、受験者は自分の知識を示すことができるからです。

  • 認定団体は、職業技能の準備度合いを検証することで、試験の価値を向上させることができます。
  • 受験者は、業務に関連する実際の状況における能力を証明することで、雇用可能性を高めることができます。
  • 雇用主は、より質の高い (信頼できる認定資格により裏付けられた) 候補者を採用することができます。

この試験方法は、受験者がどのように知識を応用できるかを測定するため、さまざまな業界での利用が増えています。この試験方法が実際にどう機能するかを示す一例として、医療業界の例を見てみましょう。パフォーマンスベースド試験による臨床医試験の実施が増えています。これは客観的臨床能力試験 (OSCE) としても知られ、実生活の場における受験者のスキルや応用知識を評価するものです。この試験では複数の試験場所を移動しながら、それぞれの場所で受験者は臨床シナリオを提示されます。シナリオでは患者役に症状を訴えてもらい、受験者は、彼らを診断する様子を観察されます。

パフォーマンスベースド試験は受験者にとって刺激的な手法ではありますが、以下のような、考慮すべき重要な点があります。

  • 試験時間の長さ - パフォーマンスベースド試験の試験問題は、標準的な知識ベースのものに比べ、進めるのに時間がかかる場合が多いため、両タイプの試験方法を組み合わせることを検討しましょう。
  • ソフトウェアライセンス - 試験を実施する環境で特定のソフトウェアを複製・使用するには、事前に特別な許可を得なければならない場合があります。
  • インターネット接続 - 極端な遠隔地や接続が悪い場所でのパフォーマンス試験の実施には、インターネットの速度やレイテンシ (遅延時間) について検討しましょう。

Making it Happen

認定資格は新たなデジタル時代を生き抜くカギとなる:Open Group による新しい技術標準の推進

デジタルトランスフォーメーションは、ほぼすべての業界に変化をもたらしています。世界の IT  業界は活気付いて、今では、デジタル技術は国内外において組織行動のあらゆる面に影響を及ぼしています。そのため、各組織では、デジタル環境の変化に付随する新たな要求事項や基準、ポリシーを理解し、実際にビジネス上の問題の解決に役立つ熟練のプロフェッショナルを必要としています。

業界有数の認定資格は、企業がその業界最高の人材を確保するのに役立つだけではなく、進化し続けるグローバル IT 業界が、一貫性、コンプライアンス、そしてサービスの質を維持するのにも役立ちます。

当社はこの 3 年間、技術標準を通してビジネス目標の達成を可能にすることに熱心に取り組んでいる世界的なコンソーシアムである Open Group と協業してきました。Open Group の認定資格は、IT プロフェッショナルが広範な IT 業務で必要な関連知識、スキル、専門能力を有していることを示す、世界的に認知された信頼性の高い認定です。

Open Group は IBM、オラクル、シスコなど世界をリードする 700 以上の IT 企業の加盟組織で構成され、異なるスキルセットを対象とするグローバルな試験配信を要件としています。同団体は、さまざまな業界の受験者の認定試験にかかる物流面の負担を低減するために、さまざまな試験配信方法を統合し、IT プロフェッショナルのキャリア開発と業界のさらなる成長を支援しています。

Open Group の Standards and Certification 部門 バイスプレジデントである Andrew Josey 氏は次のように語っています。「我々の活動すべてにおいてベンダーニュートラルであること、認定資格が高く評価されていること、そしてこの業界で重要な役割を担う有能なプロフェッショナルを選別する上で最も信頼できる方法を提供していることを証明できることが必要不可欠です。」

受験者に利便性、柔軟性、受験のしやすさを提供することは、世界を舞台とするコンソーシアムの信頼性に不可欠であり、昨年は当社の常設テストセンター、特設テストセンター (イベント型試験) ならびにオンライン試験監督 (Online Proctoring) を通して、15,000 件近くの試験が実施されました。

さらに Josey 氏は次のように述べています。「当社の試験がどのような形式でいつ実施され、受験者が世界のどこにいようとも、試験結果は一つの受験記録に集約される仕組みになっています。これにより受験者にメリットがあるだけではなく、我々にとっても、さまざまな専門能力の開発段階にいる受験者をカバーする多くの認定試験プログラムを管理する際に、包括的なアプローチを取ることを可能にしています。」

Open Group は多数の異なる認定に合わせて試験内容を設計し、開発しなければならないことに加え、IT コミュニティのあらゆるセクター (いくつか例を挙げると、顧客、ソリューションベンダー、ツールベンダー、実務担当者など) に影響を及ぼす新たな規制やポリシーが導入される中、この認定プログラムを業界の進化に適応させていくことが極めて重要です。

「ピアソンVUE は、この世界的なコンソーシアムの課題や、我々が業界の急速な変化に機敏に対応する必要があることを理解しています。世界中に認定プログラムを拡大している中、ピアソンVUE は我々の業界地位のさらなる向上を支える真のパートナーとなっています。」と、Josey 氏は述べています。

In the Spotlight

安全基準の強化:イギリスの建設業界に与える認定資格の影響

認定資格は、受験者の生活だけでなく業界の未来にも大きな影響を与えることが実証されています。

各産業部門は新しい規制と労働慣行を遵守する必要があるため、その業界固有の変化とともに試験プログラムを進化させることが必須となっています。

建設業界が厳しい安全衛生基準を定めていることは驚くことではありません。建築現場で働くすべての労働者は、自分の安全、周囲の人々の安全、そして労働環境を理解することが必要不可欠です。

CITB (Construction Industry Training Board:建設業労働者訓練委員会) は 、最新の規制の変更に合わせて「作業員のための健康、安全、環境 (HS&E) に関する試験」を見直す必要があり、2 年前に ピアソンVUE と提携を結びました。

業界と歩調を合わせる

この分野において、実務経験は貴重な資産であり、認定資格は作業員が最新の安全衛生基準をよく理解していることを雇用者に保証することができます。

CITB の試験内容を受験者に分かりやすいまま最新にするために、以下の改訂がおこなわれました。

  • 現場の専門家との緊密な協業により、すべての作業員試験の問題は難易度で評価されるようになりました。改訂された試験は作業員にとって「公平な機会」となります。
  • 各受験者は、作業員試験でより幅広い問題の選択肢が与えられ、簡単/中程度/難しい問題が同じ割合で出題されるようになりました。
  • 一部の受験者は読み書きに問題があったり、英語が第一言語ではない場合もある、という事実を踏まえ、一部の刷新された試験には画像をドラッグアンドドロップして解答する問題が含まれています。 
  • テストセンターから、多くの受験者が試験画面の操作方法に苦労していたとの報告を受けていたため、画面上のチュートリアルが改善されました。新試験では、受験者は試験中に操作方法を確認できるようになりました。

試験の信頼性を維持する

実際の職場状況との関連性を評価するために、建設業界で初めて実験的に新しい問題形式が導入されました。新しい問題形式は、すべての人にとって試験が公正で、且つ信頼性があることを保証するために、実際の建設業界の現場で必要とされる知識を反映しています。

CITB の製品管理部長である Jonathan Chivers 氏は次のように述べています。「この試験は、現場における労働者の安全確保に焦点を当てることが重要です。最近の変更により、試験がさらに堅牢になり、現場での労働者の安全性を維持しつつ、労働者が周囲の同僚にも同様に安全な環境を寄与できていることを確認できるようになりました。」

当社は、幅広く多種多様な業界において試験配信の実績があり、すべての専門分野には異なるニーズがあることを認識しています。試験問題をどのくらいの頻度で更新する必要があるかなど、不明な点について当社が助言やサポートを提供します。

  • 2011 年から CITB と提携し、毎年試験プログラムを更新
  • これまでに 400 万件以上の安全衛生試験を実施
  • 毎月 45,000 〜 50,000 人が受験

取得した認定資格を武器に転職する

認定資格はほとんどすべての業界で有効です。

認定資格はさまざまな職業のキャリアにおいて良い印象を与えることができ、現役軍人が一般企業に転職する際にも役立つため、軍に所属する人たちの間で、ますます人気が高まっています。

当社の IT 認定資格試験に関する調査 (VOC) によると、回答者の 89% が、認定資格によって自身の価値を雇用主に伝えられると考え、回答者の 88% が、スキルを最新の状態に保つという強いモチベーションによって試験に合格したと語っています。

たとえば、いくつもの米軍基地に勤務したウィリアム (ビル)・リプチンスキー元海兵隊曹長は、除隊後に IT 企業への転職に成功しました。

認定資格が、現役中と除隊後のキャリアパスにどのように影響し、サイバーセキュリティ業界でユニークな経験やスキルが専門的な評価を得るのに役立ったかをビルに尋ねました。

Q. 軍に所属していた時、認定資格はどのように役立ちましたか?

海兵隊時代は IT に情熱を注ぎ、次々と専門の認定資格を取得しました。それによって自身の信用度を高め、専門知識を深めることができました。認定資格は、私が海兵隊で初の 0689 Information Assurance Technicians (情報保証技術者) に抜擢されるのに有利に働いたと思います。認定資格によって専門知識やスキルを証明でき、同僚より優位に立つことができたのです。

Q. 軍人から民間人に戻るとき、認定資格はどのような役割を果たしましたか?

認定資格は、事業目的に役立つスキルを持っていることを雇用主に証明してくれます。ただ、より個人的なレベルで言えば、軍隊であれ民間企業であれ、さまざまな職場環境に合わせて習得した知識をそれぞれの場面に適用でき、あらゆる業界で仕事ができるという自信の源になっていると思います。

最新の認定資格に必要な生涯教育ユニット (CEU) を取得するために、現在私が受講中のコースは、絶えず変化し続ける今日のネット環境のなかで知識やスキルを最新化するのに役立ちます。 もちろん、未来の雇用主の関心も惹きつけるでしょう。

Q.除隊後に、認定資格を保有していることで役立ったことは?

現在私は、バージニア州に本部のある RPI グループのサイバーセキュリティ担当のシニア・バイス・プレジデントを務めています。私の担当業務は、政府機関や民間企業のリスクアセスメントやセキュリティアセスメントの実行、戦略的提案を開発するための事業プロセスの評価、社員研修の実施などです。

私が日々の業務で関わるすべては、米軍に所属していた時に習得したスキルだけでなく、専門資格の取得によって磨きをかけ証明されたスキルのおかげです。

現在でも私は (ISC)² (国際情報システムセキュリティ認証協会) の CISSP 認定 (情報セキュリティ・プロフェッショナル認証資格) と、ISACA (情報システムコントロール協会) の CISM 認定 (公認情報セキュリティマネージャー) の資格を保持しています。

Q. IT の未来の役割を見据えて、今後も認定資格を取り続けますか?

はじめての認定資格や新たな認定資格を取得しようとしていても、あるいは CEU 取得によって認定を最新化しようとしている場合でも、認定資格取得の旅に終わりはありません。認定資格は、絶えず変化し続ける IT 業界で確実に役に立ちます。

私は現在の任務として、サイバースペースを守るディフェンスラインの一翼を担っています。

習得したことを活用して日々の業務にいかすことが、専門知識を充実させ、認定資格を取得する旅の中でもっとも重要なことです。軍人時代も民間人になってからもその点は同じです。

Q.新たな認定資格の取得を検討している人にアドバイスをお願いします。

認定資格を取得することが最終目標ではありません。認定資格はより多くの機会を得るための通過点に過ぎません。学んだことを活用し実証することに本当の価値があり、それが最終的に認定資格がもたらす結果なのです。